Published February 5, 2026 | Version v1
Thesis Open

歌声分析における音源分離の影響の調査

  • 1. ROR icon Nihon University

Description

本研究では, 音源分離が歌声のビブラート特徴量に与える影響を明らかにすることを目的とし, Pop および Rock 楽曲を対象に分析を行った. ボーカル音源と伴奏音源の音量比を変化させてミックスした音源に対し, Demucs を用いて音源分離を行い, 分離後のボーカル音源とオリジナル音源を比較した. 評価には, pYIN による基本周波数推定を用い, 二乗平均平方根誤差による音高の一致率と, 基本周波数に基づくビブラートの深さおよび周期を区間ごとに算出した. ビブラート区間は, 聴覚的判断と F0 の可視化を併用して抽出した. 

 

分析の結果, ボーカル音源の音量が大きい条件では, 分離音源の基本周波数がオリジナル音源と高い一致率を示し, 音高誤差およびビブラート特徴量の差が小さくなる傾向が確認された. 一方, 伴奏音源の音量が大きい条件では, 音高誤差が増大し, ビブラートの深さおよび周期においても一致率が低下した. 特に, 基本周波数の推移には一部区間でノイズや倍音の影響が見られ, これが音高誤差の要因となっている可能性が示唆された. また, ビブラートの深さと周期を比較すると, 周期は対応可能な区間数が少ないものの, 差が生じない区間の割合が相対的に高いという特徴が確認された. 

 

以上より, 音源分離はボーカルと伴奏の音量比に依存して, 歌声の音高およびビブラート特徴量に系統的な影響を与えることが明らかとなった. 本研究は, 音源分離後の歌声音源を用いた歌唱表現分析において, 分離条件の設定が分析結果に与える影響を示す基礎的知見を提供するものである. 

 

今後の課題として, 基本周波数誤差の要因を, 音源分離処理と基本周波数推定処理の影響に分けて検証する必要がある. また, 実楽曲に近い楽器配置や音量バランスを考慮した条件での分析も求められる. さらに, 特徴量が算出できなかった区間の要因解明や, 多様な音楽ジャンル・歌唱スタイルおよび他の音源分離手法との比較を行うことで, 音源分離が歌声表現に与える影響をより包括的に評価できると考えられる.

Files

卒業論文_関.pdf

Files (1.3 MB)

Name Size Download all
md5:3996e6b3639eea039485c8e26c854ac3
1.3 MB Preview Download